公式一次資料のみ · OECD PISA 2022 · 各国教育省

移民の子どもの学力格差
PISA 2022公式データ 20カ国比較

OECD PISA 2022は移民背景を持つ15歳と現地出身生徒の学力差を国際比較できる最も体系的なデータ。格差の83%は社会経済的要因で説明されるが、補正後も17〜42点の差が残る国がある。

🌐 Read in English「移民の子ども」=少なくとも一方の親が外国生まれ(OECD定義)
29 pts → 5 pts
OCDE平均:移民と現地生徒の数学格差(補正前→社会経済補正後)
83%
格差のうち社会経済的要因(ESCS)で説明される割合
社会経済補正後も残る格差(数学、PISA 2022)— 欧州8カ国
フィンランド-42 pts
社会経済補正後 −42 pts(補正前 −65 pts)
スウェーデン-34 pts
社会経済補正後 −34 pts(補正前 −63 pts)
ノルウェー-36 pts
補正前 −36 pts(補正後データ非公開)
ドイツ-32 pts
社会経済補正後 −32 pts(補正前 −59 pts)
デンマーク-28 pts
社会経済補正後 −28 pts(補正前 −54 pts)
オランダ-27 pts
社会経済補正後 −27 pts(補正前 −58 pts)
フランス-20 pts
社会経済補正後 約−20 pts(補正前 −51 pts)
スイス-19 pts
社会経済補正後 −19 pts(補正前 −53 pts)
ベルギー-17 pts
社会経済補正後 −17 pts(補正前 >−55 pts)
ポルトガル-25 pts
社会経済補正後 −25 pts(補正前 −32 pts)
スペイン-7 pts
社会経済補正後 −7 pts(補正前 −32 pts)— ESCSが格差の60%以上を説明
出典:OECD PISA 2022 Results Volume I — Immigrant Background and Student Performance

負の値=移民の子どもが現地生徒を下回る(移民に不利な格差)。社会経済的要因(ESCS)統制後の値を使用。ノルウェーは補正後データ非公開のため補正前値を掲載。

移民の子どもが現地生徒を上回る国(点数制移民政策)— PISA 2022
オーストラリア+26 pts
移民が現地生徒より26 pts上回る(社会経済補正後)
ニュージーランド+16 pts
移民が現地生徒より16 pts上回る(社会経済補正後)
アメリカ+16 pts
移民が現地生徒より16 pts上回る(社会経済補正後)
イギリス+12 pts
移民が現地生徒より12 pts上回る(社会経済補正後)
出典:OECD PISA 2022 Results Volume I — Immigrant Background and Student Performance

正の値=移民の子どもが現地生徒を上回る(移民に有利な結果)。これらの国は学歴・スキルによる点数制移民政策を採用しており、高学歴の親を持つ子どもが多い。

方法論上の重要注意点

  • 「移民の子ども」の定義:OECD定義では、少なくとも一方の親が外国生まれ(第二世代)または本人が外国生まれ(第一世代)。各国の国内統計は異なる定義(国籍、外国生まれ等)を用いる場合があります。
  • ESCS(社会経済文化的指標):家庭の収入・親の学歴・自宅にある文化的資源(本の数等)を組み合わせたOECDの複合指標。これを統制することで移民出身そのものの影響を測定できます。
  • 点数制移民政策の効果:オーストラリア・ニュージーランド・カナダ・イギリス等は学歴・スキル・言語能力を基準に移民を選別するため、移民の平均学歴が高く、その子どもも高い教育資本を持つ傾向があります。
  • 言語環境の影響:格差が大きい8カ国(欧州)では、移民の子どもの60〜85%が家庭で受入国言語以外を使用しています。これがESCS統制後にも格差が残る主要な説明因子の一つです。
  • 第一世代と第二世代:ノルウェー・イタリア・デンマーク等のデータは、第二世代(国内生まれ)では格差が大幅に縮小することを示しています。

PISA 2022 数学格差:国別データ一覧

格差(補正前)格差(ESCS補正後)分類
フィンランド-65 pts-42 pts大きな残余格差
ノルウェー-36 ptsデータ非公開大きな格差(補正後不明)
スウェーデン-63 pts-34 pts大きな残余格差
ドイツ-59 pts-32 pts大きな残余格差
ポルトガル-32 pts-25 pts中程度の残余格差
デンマーク-54 pts-28 pts大きな残余格差
オランダ-58 pts-27 pts大きな残余格差
フランス-51 pts約-20 pts大きな残余格差
スイス-53 pts-19 pts中程度の残余格差
ベルギー>+55 pts-17 pts中程度の残余格差
スペイン-32 pts-7 pts小さな残余格差
イタリア-30 pts非有意ESCSで格差はほぼ解消
アイルランド-8 pts非有意ESCSで格差は解消
イギリス+12 pts+12 pts移民の子どもが優位
アメリカ非有意+16 pts移民の子どもが優位
ニュージーランド+16 pts+16 pts移民の子どもが優位
オーストラリア+26 pts+26 pts移民の子どもが優位

正の値=現地生徒が移民生徒を上回る。負の値=移民の子どもが現地生徒を上回る。
出典:OECD PISA 2022 Results Volume I — Immigrant Background and Student Performance

この統計が示さないこと

  • PISA格差のOECD平均83%は社会経済的要因で説明されます。ただし、社会経済補正後も一部の国では17〜42点の格差が残ります。
  • 格差は移民の出身国・学習言語・親の教育水準によって大きく異なります。集計データはこの多様性を覆い隠します。
  • 第2世代移民(受入国生まれ)のスコアは第1世代より大幅に改善する傾向がありますが、国によって異なります。
  • PISA は15歳時点の一時的スナップショットであり、生涯にわたる教育成果を反映するものではありません。
  • 英語圏(豪・NZ・米・英)では移民が現地生まれを上回るスコアを記録しており、欧州のパターンとは異なります。